値千金
初夏、夜が静まりかえり
まだ虫達も鳴き方を知らず
都会の喧騒もはじめからなかったように
深々と闇夜のなかに
ぽつりぽつりと赤提灯
素通れば賑やかな笑い声
素通ればまた静寂
黙々とごみの袋をトラックに
積み込むひとの眠るとき
わたしの夜があけるだろう
ひとの幸せ願う時
わたしは少しもこころは動かぬ
わたしのように穏やかな
こころ持ちさえあればいい
みんながこの夜の静寂の
穏やか胸にあればいい
今宵は泣いてるあのひとも
あしたはなにかを美味しいと
あしたはなにかがうれしいと
そんなひとときが訪れる
そんなことを願っている
そんな時こそわたしには
この世の素晴らしさが理解できる。