黒き球
ハンカチに包まれたダンゴムシ。
それを人差し指と親指でつまんでいる。
厚さを測るように。
そのダンゴムシはじっとしている。丸まったままじっとしている。
わたしはダンゴムシを逃がしたくない。
だから、つまんでいる。
でも、こわいのだ。
わたしの眼が光を拒んで、全てを壊してしまおうか、と闇を灯すときが来たら
わたしはきっと、ダンゴムシを潰してしまう。
その愛おしい姿もハンカチ越しで直視できないままに。
そんな現実じみた妄想に、わたしはわたしがこわくなる。
自分の指すら、力加減できないとままに思う。
逃してしまおう、と過っても、わたしはそれをしない。
聞こえる音はなんだろう。
指の感触はどうだろう。
ダンゴムシが2mくらいになってわたしを喰ってくれたら、わたしはこんな小さな悩みごと消えてなくなれる。
ダンゴムシはわたしの奴隷ではないのだ。